「塗料」とは塗装する対象物を保護、美装、独自の機能・効果を与えるために、表面に塗布するものです。塗料はホームセンターなどで気軽に入手できますが、塗装の目的に応じて多くの種類があり、どれを選んでいいのか悩むこともあります。そこで今回は、塗料の成分や種類、特徴、目的に応じた選び方を解説します。これを読めば塗料の基礎が分かりますよ!
塗料にはさまざまな機能がありますが、大きく分けて3つの機能を持っています。「塗料の3大機能」に加え、塗料に含まれる成分についてご紹介します。
塗装する対象物を美しく見せる機能は、塗料の色や模様、光沢などによって生まれるメリットです。塗装することで対象物を目立たせることができ、反対に周囲の環境と馴染ませることもできます。
塗料によって塗装する対象物を守ることができます。その秘密は塗膜にあります。対象物を塗膜で覆うことで、紫外線や酸性雨などの外的要因から守り、劣化を防いでくれます。
塗料によっては耐候性、耐薬品性、耐火性など、特別な機能を持つものがあります。屋根や外壁には耐候性や耐熱性のある塗料、電気を通したくないものには絶縁性のある塗料など、目的に応じて使い分けることができます。
そもそも塗料はどんな原料からできているのでしょうか? 塗料に含まれている成分を知っていきましょう!
塗料の色を決めるのが顔料です。ただ色を決めるだけでなく、錆びを防ぐ「錆止め顔料」や塗料を増量させたり、塗装の作業性を改善させたりする「体質顔料」と呼ばれるものもあります。また、着色の場合は顔料の他にも「染料」を用います。
塗料の性質を決めるのが樹脂です。天然樹脂(ロジンやセラック)、アクリル樹脂、シリコン樹脂、ウレタン樹脂のような合成樹脂などさまざまな種類があり、樹脂の違いによって耐候性があるもの、柔軟性があるもの、耐薬品性があるものなど、その塗料の特徴が決まります。
樹脂は塗料の性質を決める役割を持っていますが、添加剤はその樹脂にさまざまな性能を与えてくれます。たとえば、塗料のタレや保管中の沈殿を防止するもの、塗装や乾燥中に発生する小さな気泡を予防するものなど、添加剤を入れることによって塗料をより使いやすくしてくれます。
顔料や添加剤を溶かし、液体の状態にすることで塗りやすくしているのが溶剤です。溶剤は大きく2つに分かれ、強い溶解力のある「強溶剤」、溶解力は弱いものの有機溶剤の匂いを抑えた「弱溶剤」があります。また、水性塗料には「水」を使います。
塗料は原料や成分、目的、機能に応じて数多く分類されています。塗料に含まれる成分の種類や特徴について紹介していきます。
顔料系の塗料には、無機顔料(着色顔料・体質顔料・機能性顔料)と有機顔料(合成顔料)があります。
「鉱物顔料」とも呼ばれ、種類は少ないものの落ち着いた色調が特長。耐候性や耐薬品性に優れているものが多く、有機顔料に比べて隠ぺい力も高いです。価格は比較的安価です。
無機顔料と対照的な性質を持つのが有機顔料です。成分は石油から構成される合成顔料で、鮮やかな発色と多様な色彩が特長。ただ、耐候性や隠ぺい性に劣り、価格も高めです。
塗料に含まれる樹脂は、どんな樹脂を使っているかで性能が大きく変わることは先に述べました。では、具体的にどのような特徴があるのでしょうか?
アクリル塗料は手軽に扱えるので、多くのメーカーから商品が出ています。他の塗料と比べて安価ですが、耐久性が低く、ツヤ落ちも早いです。こまめに色を変えたり、塗り替えたりするつもりであれば、充分使えるでしょう。
短期間で解体する予定の建物や、コストを抑えたい新築建売住宅などで使用されることもあります。
アクリル塗料よりも耐候性・耐久性が高いのが特長。軟らかく密着性が高く、木部や雨どいなど細かい部分の塗装に使われます。アクリル塗料などの塗膜の上からも下地作りなしに直接塗装できるので、塗装工事業者に好まれます。ただ、気温や湿度に影響を受けやすい性質もあるので注意が必要です。
現在、外壁や屋根の塗装にもっとも使われている塗料です。紫外線に強く、耐候性もある割には価格も適正なのが人気の理由でしょう。塗装後の仕上がりも美しくコストパフォーマンスが高い塗料と言えます。
現在、もっとも耐久性の高い塗料のひとつとして数えられます。シリコン塗料に比べて3倍近くの価格ですが、15~20年の耐久性を誇ります。特にマンションなどの大きな建物の屋根部分に使われることが多いようです。まだ市場に出始めたばかりの塗料なので、今後普及すれば価格はもっと下がる可能性はあります。
揮発性の高い溶剤に硝化綿や合成樹脂などを溶かした塗料です。乾燥性が速く補修性が良いため、一般的に多く使用されています。ただし、耐溶剤(シンナー)性がないため、塗装面が硬化した後でもシンナーで溶けてしまいます。
塗料全体が塗膜になり、非常に厚い塗膜が得られるため、光沢のある高級な仕上げが可能で、楽器や仏壇、家具などに多く使われる塗料です。硬化には促進剤と触媒の混合が必要で、これらの量を増減することで塗料の可使時間や硬化速度が変わりますが、可使時間が短く、木材のヤニで硬化が阻害されるという欠点を持っています。
希釈剤に水を使っているか、有機溶剤を使っているかで、水性と油性に分かれます。水性塗料は臭いが少なく、環境にやさしいことが特長。塗った後、ハケなどの道具を水で洗えるのもポイントです。
水性よりも耐久性があり、発色性も良いです。水性塗料はハケで塗ったときに塗り跡が残ってしまうことがありますが、油性塗料は乾燥すると塗り跡が目立たなくなり、平滑な塗膜を作ります。
塗料の主剤が1つだけのものを指します。つまり、塗料ひとつあれば、そのまま対象物を塗ることができます(塗料を薄める場合は水や有機溶剤を使用します)。塗料を買ってくれば、すぐに使うことができるので作業性が高いのが特長です。
主剤である塗料と硬化剤の2つに分かれており、塗装する直前にこの2つを混ぜ合わせて使います。硬化剤と混ぜ合わせるため、乾燥後は強固な塗膜を作ることができます。しかし、数時間ほどで固まってしまうため、作り置きや保存ができず、作ったらその日のうちに使い切らなければなりません。
塗料の基礎知識を理解したところで、実際に塗りたい対象物に合った最適な塗料を選んでみましょう。どのように選ぶのがベストなのか、押さえておきたいポイントを項目に分け、分かりやすく紹介します。
金属は塗料が付きにくいので、適切な手順を踏んで塗装するのがポイント。金属がすでに塗装されている場合や錆がある場合は、塗料や錆を落とし、塗料の密着度を向上させるプライマーで下塗りをします。しっかり乾燥させたら、金属専用の塗料で塗装します。
おすすめは水性塗料。最近は水性でも油性と同じくらいの耐久性を持っている塗料が多く、環境面においても水性塗料を使うのがおすすめです。
コンクリートを塗る場合は、3つの塗料を使うのが主流です。1つめは「撥水塗料」。雨水を弾く効果があり、安価に塗装できるので雨漏り予防に最適。ただ、耐久性が低く、こまめに塗り替える必要があります。
2つめは「カラークリア塗料」。撥水塗料よりも保護機能が高く、コンクリートの風合いを残すこともできます。撥水塗料に比べて高価なのが難点です。
3つめは「弾性塗料」。ひび割れの表面化を抑え、雨漏りのリスクも少なくなりますが、コンクリート独特の風合いを消してしまいます。シリコン系の塗料を使用するのが一般的です。
木材用の塗料は他の素材に比べて種類が多く、さまざまなタイプが販売されています。木目を生かすもの、木目を隠すもの、耐候性の高いもの、防腐効果のあるものなど、多岐にわたります。また、塗りたいものが屋外で使うものなのか、屋内で使うものなのかでも変わってきます。たとえば、屋外で使うウッドデッキは耐久性の高い油性塗料が多く使われ、屋内で使う家具などは水性塗料で塗るのがおすすめです。
塗料は対象物の素材や使用目的、欲しい機能によって変わってくるので、塗料を専門に扱う会社に相談してみるのもいいでしょう。
臭いや化学物質による健康被害などが懸念されるため、安全性の高い塗料が求められます。水性塗料や自然塗料をはじめ、屋内での使用面積に制限のないF☆☆☆☆取得塗料が望ましいです。
外装には耐久性が求められますが、樹脂の種類によって変わってきます。「アクリル<ウレタン<シリコン<フッ素」の順に耐久性が上がりますが、比例して価格も高価になっていきます。塗りたいものをどのくらいの期間使うのかを見極めて塗料を選びましょう。
塗料の種類や塗りたいものの素材、塗り方によって必要な塗料の量は変わります(詳しくは塗料の取扱説明書やカタログなどを参考にしてください)。ただ、塗る面に凹凸があったり、下地の色が濃い場合、木材やコンクリートのように吸い込みのある面を塗る場合は、重ね塗りの必要があり、多めの塗料を要するので注意してください。
外壁などを塗装する際、カラーサンプルという小さな色見本で色を選びますが、実際の塗装ではカラーサンプルの色味よりも明るめに見える傾向があります。そのため、好みのカラーサンプルよりも彩度(色の鮮やかさ)や明度(色の明るさ)をワンランクからツーランク下げて選ぶとイメージに近い色に仕上がります。
その他にも面積が狭いところに塗られている色は暗く、濃く見え、反対に広いところでは薄く、明るく見えることも。外壁などは太陽光に照らされているので、カラーサンプルを屋外で見て確認することも重要です。
また、ツヤについてもツヤあり、ツヤなし、半ツヤ、さらに3分ツヤ、7分ツヤなど細かな調整ができる場合もあります。機能面においては、ツヤありのほうが表面が滑らかなため、塗膜の劣化の原因となる汚れが付きにくく、寿命も長くなります。
塗装する対象物の大きさや形状、目的(美観、防錆などの保護)で道具が変わります。刷毛やローラー、エアゾール(スプレー缶)など、現場で塗装を行う場合、もしくは工場でスプレーガンやロールコーターなどの塗装機器や設備を用いる場合でも塗料が変わります。塗装道具や方法に適した塗料を選択しなかった場合、希望するような仕上がりにならないこともあります。塗料を選ぶときは、メーカーが推奨する塗装方法も確認しておいたほうがいいでしょう。
多くの塗料メーカーは「湿度85%以上、気温5℃以下」での環境条件では塗装ができないと規定しています。なぜなら、この条件下だと塗った塗料は乾燥しにくく、しっかりとした塗膜を作れないからです。そのため、塗装する際はこの条件を避けることが望ましいです。ちなみに、塗装に最適な条件になりやすい時季は春と秋です。
ただ、時季を選んでいられない場合もあるので、そのようなときは外的環境の影響を受けにくい油性塗料を使ったり、扇風機などを利用したりして換気を良くするなど、工夫をすることでうまく塗装できることもあります。
着色塗料の場合は、メーカーによって色味が微妙に違うため、異なるメーカーの塗料を混ぜ合わせたり、同じ場所に使ったりすることは避けたほうが無難でしょう。違うメーカーの塗料を組み合わせて使った場合、もし、相性の問題が出たときでもメーカーは対応してくれないことがほとんどです。塗料の色や機能など、塗料メーカーによって取り扱いはさまざま。メーカーの製品情報を見てみるのもよいでしょう。
「欲しい塗料が見つからない」、「好みの色がない」。そんな場合は、調色をして好みの色を作ってもらうことが可能です。メーカーによってはオリジナルの塗料を作ってくれたり、受託製造(OEM)やプライベートブランド(PB)製品の製造を依頼できることもあるので、一度相談してみるとよいでしょう。
ホームセンターや塗料専門店に行くと、さまざまな種類の塗料が棚いっぱいに並んでいます。これだけ多くの種類があるということは、それぞれの機能や役割も多岐にわたることをご理解いただけたかと思います。
塗料は塗装するものをどのようにしたいのかによって変わってくるので、単純に「安いから」、「扱いやすいから」といったことだけで決めず、総合的な視点で選ぶことが重要です。ただ、総合的な視点で見れば見るほど、選びきれなくなることも確か。
そんなときは思い切って塗料のプロに相談してみましょう。専門的な知識と経験できっとあなたにピッタリの塗料を選んでくれるはずですよ!
玄々化学工業は1937年に創業した塗料メーカー。専門的な知識と長年の経験によって、さまざまな塗料を生み出し、多彩な製品ラインアップを用意しています。既存製品だけでなく、新規塗料開発や受託製造にも力を入れており、塗料に関する「こうしたい!」に応え続けています。ぜひ、お気軽にご相談、お問い合わせください。
塗料は色を決める「顔料」、性質を決める「樹脂」、特定の機能を付与する「添加剤」、顔料や添加剤を溶かす「溶剤」の4種類から構成されています。
顔料、樹脂、溶剤、液型の違いや塗装の目的によって多岐にわたります。一般的によく知られているのは、溶剤の違いによる水性、油性、樹脂の違いによるアクリル、ウレタンなど。それぞれの塗料の性質や使用性を考慮して選ぶ必要があります。
塗りたい素材や用途、耐久性、塗る量、色やツヤなど、塗料選びのポイントは多数あります。塗装によって何を得たいのかを明確にし、総合的な視点で選ぶのが重要です。
好みの色がない(違う)場合は、塗料の専門店で調色をして自分好みの色を作ってもらったり、塗料メーカーに相談して新しい塗料を開発してもらったりすることができます。好みの塗料がない場合だけでなく、塗料について困ったことがあったら塗料のプロに相談してみるとよいでしょう。
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